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深山 敏郎

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第149回 困ったときの老荘だのみ エピソード49

2024/04/23

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。

コラムの148回目では、「居ながらにして天下を知る」について検討してきました。
「道」こそが基準であり、その他の基準を外に追い求めても意味がないということでした。
今回は、「無為と作為」です。

「無為と作為」とは何か

今回は老子の言葉「無為と作為」の意味をご一緒に考えましょう。
老子は言います。
知識が万能という考えを、学問を志す人は日々強めていきます。
しかし、「道」にのっとっている人は日々知識が万能であるという意識を低めていくというのです。

「道」を体得することを理想とする人は「無為自然」に振舞い、決して知識を重んじすぎないのです。

数字至上主義への反省

BSC(バランスト・スコア・カード)という言葉があります。
経営の各プロセスに重要指標を設定し、その指標が予定通りなのか、それとも異常があるのかで現場の状況を経営陣が判断しようという考え方です。
それをあまりにも重視しすぎると、逆効果になることがあります。
人間性を理解せずに数値だけで判断することは危険なのです。

例えば従業員同士が頻繁に雑談をしたり、通常と異なる仕事の仕方をすると作業効率の数値が予定通りにならない場合があります。
しかし一方では従業員同士のコミュニケーションが向上し、助け合おうという意識が芽生えることもあります。
それが長期的には組織には組織にとってプラスになる場合があります。
数値だけで良否を判断することは危険であり、初期に設定した基準自体の見直しが必要になる場合もあるのです。

F.W.テイラーの「科学的管理法」を曲解する人は、作業の効率を最大限に向上しようということで、数字に頼ることになります。
もともとテイラーは、先に入社したというだけで効率が悪い従業員の方が、後に来た効率の良い新人よりも多い給与を貰うことに疑問を持ち、作業効率に応じた報酬を提案したわけですが、多くの場合正確には理解されていません。
しかし、「道」を深く理解していれば人間の摂理にかなった応用の仕方をするのです。

MBO(目標による管理)も同様です。
提唱したとされる、P.F.ドラッカーは、目標数値を追いかけて疲弊するような管理を理想としたわけではなく、従業員が自ら目標を立て、それを自分なりに工夫して達成していくプロセスが仕事を楽しくしてくれるということを言いたかったわけです。

こうしたことを曲解すると、数字至上主義で人間性を否定し、自己疎外を起こし、自分の幸福追求のためではなく、数字のために仕事をすることになります。
心理的安全性の正反対に作用してしまうのです。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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