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深山 敏郎

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第137回 困ったときの老荘だのみ エピソード37

2024/01/30

毎回老子の言葉をひとつずつご紹介しています。
コラムの136回目では、「『道』は用いてこそ価値がある」について検討してきました。
老子は、「道」を語ることに意味はなく、実行することによってのみ価値があるということを教えてくれました。

今回は、「奪うためにはまずあたえよ」を検討してみます。

奪うためにはまずあたえよ

今回は老子の言葉「奪うためにはまずあたえよ」をご一緒に考えましょう。
この章は学者によっては、本当に老子の言葉だろうかと疑われることもあります。
見方によっては権謀術数、つまり権力、謀略、技法、計算を意味する内容ではないだろうか、老子の言葉として、本当にふさわしいのだろうかと疑うこともできます。
しかし、この冷徹な姿勢は実は自然の摂理そのものである、ともいえるでしょう。
そうした観点からは老子の言葉として、やはり一貫性があると考えられます。

「奪うためにはまずあたえよ」の内容は、例えばものを縮めたければ、まず伸ばすことから始める。
弱くしたいのであれば、まず強くしてやる。
滅ぼしたいのであれば、まずは隆盛を極めさせる。
もし奪いたいのであれば、まずあたえてやるということです。

自然の微妙な摂理を理解する

老子はこうした自然の摂理をよく理解することを私たちに求めています。

この摂理があるからこそ、「柔よく剛に勝つ」が成り立つのです。
また、魚は水から飛び出してしまえば、生きていられません。
武力を誇示すると、国は滅びます。

自然の摂理をビジネスにも生かす

私たちがビジネスをするときに、自分はこうしたい、会社をこうしたい、こういう商品・サービスを開発したいといった希望を持ちます。
社会に不足しており、お客様が欲するものであれば、このようにプッシュ型で開発・マーケティングをすることで会社も繁栄し、従業員も満足を得られていたことでしょう。
現実にはこのような市場は非常に珍しくなっていることでしょう。
そのために、いろいろな技法・手法が開発されました。
ここではおそらく最もシンプルなモデルを使ってお示ししましょう。

ビジネスにおいては、一般的にまず商品・サービスとそれを使うとどのような良いことをお客様にご提供出来るのかという情報を企業が提供するのが普通です。
そのうえで、お客様が満足、あるいは不満足を持ちます。
それをきちんとくみ取る姿勢と仕組みが必要なことは議論の余地がありません。

例えば、皆様がよくご存じのグリコ「ポッキー・チョコレート」という商品群があります。
この商品はどのように開発されたのか、というお話をします。
すでにご存じの方もいらっしゃることでしょう。
先行販売されていた「フィンガー・チョコレート」(1969年 カバヤ食品株式会社 が発売)は、子供用のお菓子として大変売れていました。
子供の指のような形のビスケットにチョコレートをコーティングして、銀紙で包んだものです。
この発売はお客様への一つのインプットですね。

一方でそれを子供に買い与える保護者の悩みは、子供が手で握って食べ、服で手をふき、洋服がチョコレートまみれになる、ということでした。
こうしたお客様の悩みをとことん考えて作ったのがグリコの「ポッキー・チョコレート」であったということです。
業界他社ではありますが、すでに「フィンガー・チョコレート」というヒット商品があった。そういうインプットがあってお客様が反応してくださった。
そのお客様の悩みに対応するような商品を作って大ヒットし、その後シリーズ化して現在に至ります。ロングセラー商品開発の裏話です。

現代ではこれほどシンプルな状況ばかりではないでしょう。
しかし、お客様の声を直接お尋ねするには、まずは自社の商品・サービスをご提供することが有効ではないでしょうか。
それをどのように変えていったらよいかを教えていただく、その上で新たな商品・サービスを企画し、ご提供して満足を得ていただく。
こういうことをやり続けるわけです。
イメージとしてスパイラル(螺旋階段)のように上がっていく。

欧米には、“Give and Take”という言葉があります。
これは元来、利己的な言葉ではなく
よく使われるWin-Winとほぼ同じ意味をあらわします。
まずは見返りを求めずに自分が相手に与え、結果として、相手も私たちに与えてくれるということです。

老子が言いたいことから、ややそれてしまったかもしれませんが、「奪うためにはまずあたえよ」という言葉にあらわれる自然の摂理は、ビジネスの世界でも生かされているのです。

本コラムが私たちの日々の悩みを和らげ、深く自省するきっかけになれば幸いです。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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