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深山 敏郎

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第101回 困ったときの老荘だのみ エピソード①「真理は固定したものではない」

2023/05/23

前回このコラムの100回目ということで、ゲーテの格言を取り上げました。

ゲーテの格言「形作れ 芸術家よ、語るな」は青春時代の筆者を勇気づけてくれた言葉です。
また、今もこの精神に立ち返りたいと日々思っています。

困ったときの老荘だのみ

今回から何回かにわたって中国の古典「老子」、そしてこのシリーズの後に「荘子」からいくつか皆様のお役に立ちそうなエピソードや言葉をご紹介しましょう。

筆者が人生の岐路に立ったとき、この老荘の思想やエピソードに助けられました。
まさに筆者は“困ったときの老荘だのみ”です。

謎の人物“老聃(ろうたん)”

「老子」という書物の著者とされる老聃(老子のこと)という中国春秋時代の哲学者の説を記した書籍といわれていますが、諸説ありまして、老聃とは架空の人物であり、中国の学者たちの知恵をまとめた書物という説もあります。
それを前提にコラムをお読みいただければ幸いです。

「老子」の思想は、中国では後に「道教」として形を変えていきますが、このコラムではあくまで思想・哲学として「老子」という書物(徳間書店「中国の思想第6巻 老子・列子」)から筆者が得られた教訓や慰めの言葉を引用致します。

真理は固定したものではない

「老子」では真の道(原理)は絶対不変ではない、と説いています。
原理というのは、ビジネスにおいては「法則」、「定石」、「勝ちパターン」、「セオリー」などという言葉で表現されています。
老子は原理となる「道」というものは未来永劫、そのまま絶対に変わらないものとはとらえていなかったようです。

ビジネスに置き換えてみましょう。
日本の流通業ではかつて、駅前の百貨店や商店街が隆盛を極めました。
それをどんどん駆逐していったのは、ロードサイドに大型店舗を構えるチェーン店でした。
こうした多くの商業集積は、カナダ トロントのイートン・センターなどをモデルにして、大型百貨店や大型スーパー・マーケットなどの核店舗と他の核店舗の間をショッピングモールやサービス施設などが並び、お客様は家族で訪れて半日から1日をかけて、ゆっくりショッピングやレジャーに費やす時間を楽しむという具合です。
ちなみに、同じカナダの西部アルバータ州にある北米最大の商業集積ウエスト・エドモントン・モールなどの超大型ショッピングセンターでは、カナダ全土やアメリカ合衆国、ヨーロッパ、そして日本からも多くの人が集まり、1~2泊して家族でショッピングとレジャーを楽しむという具合です。

日本でも、かつて好立地だった駅前の百貨店や中型のスーパー・マーケット、つまり生鮮4品(肉、野菜、魚、惣菜)に簡単な衣類などの日用品を中心に商う店は集客力を徐々に失い、赤字が続いた結果、流通業界の再編が進みました。

日本では郊外型の超大型ショッピングセンターも、超高齢社会に突入すると、自動車の運転を基本条件にする立地は陰りを見せ始め、ある程度の広さの土地があれば、住宅地の近くなどへと好立地が再び移動しました。
(ファッションセンター)シマムラなどの立地戦略です。
そして今ではインターネット・ショッピングやスーパー・マーケット、コンビニなどによる宅配なども行われるようになりました。

このように流通業界にとって、ある時代の「好立地」という原理は、次の時代には通用しなくなったのです。

流通業界に限らずビジネス上、過去の成功法則が今後も成り立つかどうかは、深く考えてから結論を出すべきなのだと筆者は思います。

老子の「真理は固定したものではない」という言葉の意味を、ほんの少しだけご説明したにすぎませんが、老子のいう「道(原理)」とは絶えず移り変わるものであると理解しておきたいものですね。

「老子」に関しては、徳間書店「中国の思想」第6巻 「老子・列子」を参考にさせていただきました。

レジリエンスの高い人の特徴を詳しく知りたい方は、拙著:「レジリエンス(折れない心)の具体的な高め方 個人・チーム・組織」(セルバ出版)などをご覧いただければ幸いです。

(筆者:深山 敏郎)
株式会社ミヤマコンサルティンググループ
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