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岩田 徹

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第129回 観察眼

2023/06/02

現在北海道日本ハムファイターズで監督を務める新庄さん。
就任時も大きな話題となりましたが、監督になってからも注目度の高い方です。
選手時代もファンを喜ばせるサービスをたくさん行い、
プロ野球人気、パリーグ人気に大きな貢献をされました。
もちろんファンサービスだけでなく、実力も素晴らしく、
現役時代にはメジャーリーグで4番を打つなど、活躍をされました。

選手時代の新庄さんはプレーでも多くの印象を残していますが、
私個人的には2004年のオールスター戦でのホームスチールが最も印象に残っています。
この年、オールスター直前の6月に、球団経営の不審が騒がれていた近鉄バファローズが、
オリックスとの合併を発表したばかり。
球界再編、パリーグだけ5チームと中途半端なら、
2リーグ制ではなく1リーグでいいのではないか、など、
長年ファンを喜ばせ続けていたプロ野球にも変化の波が押し寄せていた時期でした。
新庄さんは当時パリーグの日本ハム所属。
なかなか人気の上がらなかったパリーグを盛り上げようと、
様々なパフォーマンスをしていました。

そんなタイミングで開催されたオールスター。
その年の注目選手が一堂に会するその場で、
オールスター史上初のホームスチールを成功させました。
ただそこには、単なるパフォーマンスではなく、緻密な計算、細やかな観察眼があってこそ、
成功したホームスチールでした。

当時の相手バッテリーは新庄さんの元チームメイト。
阪神タイガースの福原投手と矢野捕手です。
新庄さんは二人の癖を見抜いていました。
福原投手は投球ではない短い距離のスローイングに課題を抱えており、
咄嗟のスローイングではボールが高く抜けることを知っていました。
また矢野捕手は投球を受けた後、一度3塁走者に視線を送ると座ったままの体制で
投手へボールを返球する、という癖があったそうです。

その癖を改めて確認しつつ、捕手が投手に返球し、
投手がまた捕手に返球するスピードを試合中にも確認。
3塁コーチボックスにいる選手にも確認を入れながら、
その瞬間を虎視眈々と狙い、見事成功。

観客だけでなく、選手たちも大いに盛り上がりました。
プレーで魅せファンを呼び、プロ野球存続に大きく貢献した新庄さん。
プレーする技術も高めながら、周囲の方の様子を分析する観察眼も秀でたものがありました。
現在の日本ハムは、パリーグで下位にいますが、
新庄監督になって選手が若返っているのも事実です。
新たに注目を集める選手を見出し、チームを強くしファンをさらに集める。
新庄監督の手腕に、これからも注目していきたいと思います。